“死体役”専門の俳優で人気に、妻の協力も得て40代から夢叶える。
どんな職業にも、その道を極めたプロは存在するもの。例えばテレビなどでは実にたくさんの芸能人を目にするが、活躍しているのは全体から見ればほんの一握りしかおらず、そうした人たちは何かしらの役割に徹したプロであることが多い。いかに自分のポジションを見つけられるかは成功のカギと言えそうだが、米国には40代にして俳優を志し、今ではすっかり有名になった男性がいる。自分なりに考えた末、彼が目指したポジションは"死体役"専門の俳優だった。
この男性は、オハイオ州ギャロウェイで普段はコンピュータープログラマーの仕事をしている、52歳のチャック・ラムさん。彼が本業のほかに死体役の仕事を行うようになったのは、5年前の思い付きがきっかけだった。結婚して6人の子どもを抱えているラムさんだが、テレビや映画に出演したいと40代にして本気で考え始めたそうだ。
ただ、残念ながらラムさんはかっこいい男性……というわけではない。特に目立つような顔立ちではなく、身長こそ約185センチあるが、体重も約100キロとガッシリとした体格をしている。自らも「私は確かに美形ではない」(英紙メトロより)と、そのことは充分理解していた。しかし、彼は俳優の夢を諦めず、発想の転換を図ったという。
そこで思い付いたのが"死体役"専門の俳優になることだ。「やりたいことはすべてやってきた」(米放送局CBSより)と話すラムさんは、妻サイラーさんの協力も得て、自分たちで小道具などを用意し、死体となったラムさんの写真を撮り始めた。それらの写真を2005年12月に開設した自身のサイト「Dead Body Guy」に掲載し、さらに映画関係者に自分の売り込みを図る。
すると、この作戦が見事に成功。ほどなくして開設したサイトはネットで人気を集め、開始1か月にして30万アクセス/日を超えるほど注目された。その評判はメディア関係者にも伝わり、テレビやラジオに取材されることも増え、CBSやNBC、CNNといった米大手放送局だけでなく、英国やカナダ、ロシアのメディアもラムさんの話題を取り上げた。
その勢いでラムさんは2007年に念願の映画出演を果たし、現在は死体役として毎年数本の映画に出演するようになっている。サイトも好調で、彼は夢を実現させた現状に大いに満足しているようだ。「最も有名な死体役になりたい」(メトロ紙より)と話すラムさんは、今でも週末ごとに妻と新たな死体のシチュエーションを考えるのが「とても楽しい」という。40代になってからの夢を実現させ、「死体役として出演し、実際にスクリーンの中で死ねたら素晴らしい」と理想を語るラムさん。人間いくつになっても、諦めなければ夢は実現できるのかもしれない。