“この世は仮想現実”の可能性、数学的に否定…「マトリックス」などで普及した概念
      "人間がコンピューターシミュレーションの現実の中に生きている可能性"が、数学的に否定された。
イーロン・マスクや、1999年公開の映画「マトリックス」などによって普及したこの概念は、私たちのいる宇宙が未知の知性によって作成された超先進的なデジタルプログラムであるかもしれないことを示唆していたが、研究誌ジャーナル・オブ・ホログラフィー・アプリケーションズ・イン・フィジックスに掲載された新研究によると、この概念は起こりそうにないだけでなく、数学的に不可能であるという。
同研究の共著者のイタリア国立光学研究所のフランチェスコ・マリーノ博士はこう話している。
「宇宙を完全にアルゴリズムで記述することは不可能であることを私たちは証明しました。シミュレーションされた世界は、現実のアルゴリズム的な部分のみを模倣することはできますが、より深層にある非アルゴリズム的な真実を包含することは常に不可能なのです」
粒子から時空に至るまで、あらゆるものが純粋な情報から出現するという量子重力理論に基づく「シミュレーションされた現実」の可能性だが、同研究はアルゴリズムの到達範囲を超えた真実が常に存在するため、この情報世界は純粋な計算では再現できないと主張している。
この主張は1930年代の数学者クルト・ゲーデルが、一部の真なる命題は数学的に証明できないことを証明した有名な研究を彷彿させるものとなっており、マリーノ博士は「これは、計算だけでは宇宙のあらゆる側面を捉えることは決してできないという証拠です」と続けた。
さらにブリティッシュコロンビア大学のミル・ファイザル博士は同研究をこう支持する。
「不完全性および不定性に関する定理に基づいて、現実の完全な記述は計算だけでは達成できないことを実証しました」
「したがって、この宇宙はシミュレーションであるはずがないのです」
さらに共同著者のオリジナル・プロジェクト・ファウンデーションのローレンス・クラウス博士は、今回の結果は「万物の理論」を見つけるという希望を打ち砕くものであり、「現実を完全かつ首尾一貫して記述するには、計算そのものを超えた、より深い理解が必要」とした。